- 日本人である貴方に対する簡単な質問,に対する答え
- 「は」も一つの答えである。問題は,それしか思い浮かばないか否かである。「は」以外の何が入るんだ?と思った人。貴方の脳は日本語という言語に相当毒されている。洗脳されている。ヒントを与えよう。文字で考えずに,音で考えてほしい。「た」「だ」,「が」「か」,「ざ」「さ」,「ば」「?」と。如何だろうか?じゃ,次のヒント。文字で,しかもローマ字で考えてみよう。「da」「ta」,「ga」「ka」,「za」「sa」,「ba」「?」どうだろう?まだ「は」以外の答えは出てこないだろうか?
- 留学生(しかも,日本語を殆ど知らない留学生)がいたら,こう聞いてみてほしい。"I have a simple question to you. I have three pairs of sounds. [da] and [ta]. [ga] and [ka]. [ba] and what?"この質問に対して,[ha]と答える留学生は恐らくゼロであろう。「え!」と驚いた人,どうしようも無いほど,日本語に毒されています。
- 答えは「ぱ」である。「pa」である。声を出す時に声帯を振るわせて出す音を有声音,振るわせない音を無声音と言う。それでペアを作っている。「ば」に対しては「ぱ」である。[b]は[p]とペアを組む。[b]の音に対して[h]で対を作るのは,恐らく日本人だけだと思う。国際的には,異常なペアリングなのである。[ha]に対して,それを有声にするとどうなるか,確かめてほしい。タンが絡んだ時に,有声化した[ha]を出している。確認してほしい。
- 「は」という平仮名であるが,日本語の文字の歴史を辿ると,[ha]ではなく,[pa]と発音したのではないか,という仮説や,「は」と「ば」は,その昔,[fa]と[va]と発音した,などの仮説がある。つまり,昔は我々も無声,有声のペアで「は」と「ば」を発声していた,ということである。なのに,何故か,そのペアリングを放棄したのである。
- 「ば」に対して「は」しか思い浮かばなかった人。日本語という言語にまんまと騙された訳である(^_^);。20年でしょうか?30年でしょうか?言語環境に生まれたヒトは,数年でその言語(母国語と呼ばれるようになる)を獲得する。柔軟なニューロンネットワークに,その言語が「ドン」と居座るのである。乳児が親を選べないように,彼らは母国語を選ぶ訳では無い。その言語がある感覚,枠組みを「当然のこと」として認識させるような側面があったとしたら・・。
- 「ある言語に依存した思考,モノの眺め方」しか出来なければ,言語の正体など暴けないのはご理解戴けるだろう。"その"言語に騙された思考しかできなければ,言語の一般論など不可能である。言語に騙されてはいけない。言語を相対化する,言い換えれば,言語を,そして人間を,外から眺めるような視点を持つことが必要である。だが,これが,めちゃくちゃ,難しい(^_^);。気付かないうちに,言語にまんまと騙されている自分に気付くことがよくある。これが事実である。何故ならば,母国語が使えなかった頃の記憶など,誰も持ち合わせていないからである。そう,言語を獲得する前の記憶が無いから,言語獲得の謎が解けないのである。
- 同様の姿勢は脳科学にも言えることである。脳が何をやっているのか,を脳が考える。これが脳科学である。ある種の自己言及である。多くの脳科学の知見は偶然がもたらしている。扁桃体,海馬,ミラーニューロン,例を挙げるときりがない。人間は,自分が何をやっているのか,ということに対して,自らの内省に基づいた方法論でまず取り組むが,脳科学の歴史をひも解くと,それが如何に困難なことであるのか,がよく分かる。脳以外で思考することができれば,脳科学は楽である。でも,我々は幸か不幸か,思考のためのリソースとして脳しか持っていない。言語研究もよく似た側面を持つ。
- 話しが脳科学にまで発展してしまったが,「ば」と「?」に対する解説はこれでおしまいである。元の頁に戻ろう。